今日の一枚 2003/11/30(日)
(毎晩11時〜12時頃アップデート、過去編はこちら



Photograph by Ishizuka Hiroko

 私の出身大学には、実験動物の慰霊碑がある。しかも、私が学生だった当時、学食の入口脇にそれはあった。畜産学科の学生以外は、ふだん実験動物たちを目にする機会はなかったが、私が所属していたクラブには畜産の学生がいたので、たまにウサギなどを持ってきては、皆で鍋に入れて味わ…、いや、供養したりということもあった。

 私のいたクラブでは、毎年の学祭で、豚の丸焼きを実演販売していた。おそらく今も続いているはずだ。その豚というのは、どこかで買ってくるものではなく、部員全員が約一週間交代でOBの農家に援農に出かけ、その代価としてもらってくるのだった。OBのKさんのお宅では、主に稲作と畜産をやっていて、稲刈りや牛の餌やり、豚小屋の掃除などの労働が、ぼくらを待っていた。
 援農の最後の順番に当たると、子豚を連れて帰らなくてはならない。もちろん生きたまま東京に連れてくる訳にはいかないので、殺してから運ぶことになる。その年は、私ともう二人が、最後の番に当たった。生まれて初めての農作業はきつくて、毎日へとへとになったけれど、メシがうまかった。

 ようやく援農が終わるという前の日、今日の午前中は農作業は休みだとKさんに言われて、豚小屋に連れて行かれた。あいつとあいつを捕まえろと指示されて、豚小屋に入る。耳と尻尾をつかんで捕まえるのだけれど、子豚たちは「いやだよう」と言わんばかりにピィーピィーと鳴き叫んで逃げ回る。不慣れなぼくらは、トラックの荷台で待ち受けているKさんに急かされながら、一人が他の豚を追い回している間に、二人で子豚二頭をなんとか捕まえ、数分かかって荷台に上げた。数日、世話をした間に少しだけ情が移った「かわいい子豚」は、ごとごと揺れるトラックに乗せられて、市場ではなく、“と畜場”に行くのだ。すっきりと晴れた、少し肌寒い秋の朝だった。

 “と殺”の現場には、おそらく衛生上の理由から職員以外入れないらしく、外で待たされた。少しして鳴き声が静まったと思った後、ひときわ大きな悲鳴が聞こえて、止んだ。
「ほら、運ぶぞ。」
 そうKさんに促されて、子豚を“ねこ”に乗せ、そのまま帰るのかと思いきや、と畜場のはずれにある小屋に準備してあったドラム缶の湯まで運んでいって、その湯で毛を取ることになった。手が生臭くなるのを感じながら、ああ、そういえば豚の毛って、歯ブラシに使ったりするよなあ…などと漠然と考えながら、おおかた毛を取り終わり、再びトラックでKさんの家に戻った。
 家では、Kさんのご家族と、残った学生一人が昼飯の準備を終えていて、さあ食えといって出されたものは、豚の生姜焼き。農家で働いたことのある人ならわかると思うが、農作業は実に腹が減る。だからご飯は大盛り数杯、おかずも山盛りが普通だ。その昼も、ぼくらは、やはり腹一杯食べた。
 昼飯の後、血を抜くために、子豚を納屋の梁に吊してから、その日も稲刈り。そして翌日、車で迎えに来た部員とともに東京に戻り、いよいよ学祭の準備だ。

 伝統的に芸能人は誰ひとり呼ばないのに、応援団の踊りを取材しにTVカメラが来たり、都区内にありながら、野菜の無料配布やら、園芸植物の即売などがあるせいで、毎年、近所の主婦やおじさんたちで盛況という、ちょっと変わった学祭だ。そうした人たちが、ぼくらの豚の丸焼きを見て、ギョッとして立ち止まる。まずは、つかみはOK(笑)。毎年来ているお客さんは、あんたたち、今年もやってるのねと声を掛けてくれたり、そういう顔をして通っていくが、初めてのお客さんには、いくつかの典型的な反応があるようだった。
「きゃあ、残酷!!」
 クラブでは、こういうお客さんが来た時には、
「そんなこと言ったって、丸ごとの姿を見慣れてないだけで、年中スーパーで買ったり、お店で食べたりしてるでしょ?」
 と、やさしく諭すよう、下級生は先輩たちから命じられている。
 しかし、中には強者もいて、いきなり説教を始めるオバサンもいる。なぜか決まってオバサンであるのが不思議なのだが、なんでこんな野蛮なことを、ここでしなくてはならないのか等々、問い詰めてくるのだ。このようなお客さんが来た時には、この豚が如何にしてここにやってきたかに始まり、東南アジアの食文化や、食べるということの意味などを、はったりを交えながら説明し、さらには買ってくれるよう、セールストークまでしなくてはならない。

 こんな調子で、子豚は、夕方には、骨とわずかの肉だけになる。一日一頭、二日で二頭。そうして得た売り上げは、諸経費と打ち上げ費用を差し引いても、それなりに残るはずなのに、収支は何故か、いつもトントン…。

 と、小さなオチがついたところで、また次回。

文: おおさわたけし /写真: いしづかひろこ
Konica FT-1 MOTOR,HEXANON AR 40mm F1.8,Kodak EB-2



Main Contents

海鴎 (Seagull) 203

中国製蛇腹6x6カメラ
Angenieux Retrofocus 35mm
(Page: 05, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45)
このページに並べていいのだろうか?のフランス製レンズ

Russar 20mm/f5.6
(Page : 05, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55

ソビエトオリジナル。超広角レンズ。

Jupiter-12 35mm/f2.8
(Page : 05, 10

ジュピター・ブランドの広角レンズ。

Penti
(Page : 05, 10, 15,)

旧東ドイツ製の化粧箱みたいなハーフサイズ・コンパクトカメラ。

Lubitel

Lubitel 敗者復活大作戦

Kenko Pinhole Lens
(Page : 05, 10

既製品のピンホールレンズ。適価で楽しめます。

Narciss

16mm フィルム使用、超小型一眼レフ。

Horizon 202
(Page : 05, 10

かの有名なホリゾン・パノラマカメラ

Zenit-3M

なかなか使えるソビエト一眼レフカメラ。

FED-2 +Jupiter-8

Photographed by Gibutsu
Gibutsu様から写真を提供いただきました

Kiev Vega

超ミニ!手のひらサイズのスパイカメラ。しかもインドゥスタールレンズつき。

Fed
(Page : 05, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55

ひと味違ったオールドで沈胴なFEDインドゥスタール

Chaika-II

BelOMOのハーフなチャイカ(カモメ)

Kiev + Jupiter-8M 50mm/f2.0

コンタックス直系のKIEVカメラ。

Iskra

非常に使いやすいジャバラーな、6x45判フォールディングカメラ。

FED-2 + Orion-15 28mm/f6

伝説のオリオンレンズ。

Zenit-C

またの名を「Zorki改SLR」、L39スクリューマウントの一眼レフ。レンズはもちろんKMZインドゥスタールf3.5/50mm。

Lomo Sokol 2

またまたLOMO製のカメラ。これはかなり期待できる立派なカメラ。作例はまだです。

Voskhod

「日の出」の名前を戴く、ソビエト LOMOからミレニアムの御来光。その名も「ヴァスホート」。

Kiev88TTL & Kiev60TTL + Arsat 80mm f2.8

ソビエトカメラ愛好家の憧れ:いわゆる貧乏人のハッセル、只今登場。まさに、ソ連の戦車。

Zorki-1 + Industar 22 f3.5/50mm

バルナックライカの血を色濃く受け継ぐソビエト製ライカコピー。

Lomo Smena (初代)

今人気のSmena8Mの初期タイプ。ルビテルレンズを積んだキッチュな逸品。

Zorki4K + Industar-50 f3.5/50mm
(Page : 05, 10, 15, 20, 最新19 )

インドゥスタール・レンズの名誉挽回大作戦。これは素晴らしいモノクロレンズ。

Lomo Smena 8M

こんな変なカメラに恐ろしいハイレベル・レンズ。99年度カメラグランプリ受賞した逸品。

Moskva2, Industar 23 f4.5 110mm

ソビエト帝國製のクラッシックでスタイリッシュな蛇腹カメラ

Zorki6 + Jupiter-8 f2/50mm
Page : 05, 10, 15, 20, 25, 30,

これも質実剛健な実用 Lマウントカメラ

Agat18K
(Page : 05, 10, 15, 20, 25)

Industarレンズを装備した最強のハーフサイズカメラ
最高のレンズをつけたロシアン写るんです

Zorki 4 + Industar-50 f3.5/50mm

これはパチモンではない立派なカメラだ。

Lomo 135BC

ウワサのゼンマイ巻き上げ LOMO 135BC。

Siluet Electro

極めてロシア的、インチキ臭いパチモン・カメラ。

鳳凰205E
page: 05, 10, 15, 20, 25, 30

中国製レンジファインダー・コンパクトカメラ

KIEV35a
(Page : 05, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90)

ウクライナ製、ミノックスコピー・パチモンカメラ

Lubitel 166U

チープな2眼レフ・カメラ

FED 5B & FED 5C + Industar-61L/D 55mm/f2.8

値段は安いが、写りは一流のウクライナのカメラ

Kyocera T Proof

もうなんつーか、簡単でよいコンパクトカメラなんだな。
 
     
     
     



番外

エスキースの部屋:吉川政春作品集

01, 02, 03, 04, 05, 06, 07, 08, 09, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60

写真集「エスキース」の吉川さんの写真です。

Matsubara Makoto Photography

01, 02, 03, 04, 05, 06, 07, 08, 09, 10, 11, 12, 13

写真家「松原誠」さんから提供していただいた写真です。松原さんご自身のサイトは、
http://studio-dada.com/

   
ロシア旅行編 3(2001/ 7月)

01, 05, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 100, 105, 110, 115, 120, 125, 130

ロシア旅行編 2(2000/ 7月12日〜21日)

01, 02, 03, 04, 05, 06, 07, 08, 09, 10
11, 12, 13

2002 台北

人生相談コーナー

  ここで打ち明けても悩みは解決されないでしょう。

Soviet-camera bbs

技術的な話題などはこちらへどうぞ。ゾルキ内田さんが答えてくれます。

食の掲示板

カメラ販売

少しずつ入荷中

メールマガジン:「今日の一枚」

ページトップの日替わり写真「今日の一枚」を、毎日メールでデリバリー。

とても適当なスナップショット講座

<露出編>
<ピント合わせ編>

画像の墓場

 不要な画像はこちらまでどうぞ。パクリもの画像の投稿はご遠慮。

 レスを期待しない、独り言のための貼り板です。
 
ソビエトカメラ党宣言

拙著の紹介です。
Fantastic Linkz

素晴らしいコンテンツのリンクばっかりです。

初めて触るロシアカメラ(使用説明)

Zorki-4



Yesterday: Today:  


[キリ番情報]
最初にキリ番を当てたら、「おめでとう!」が出ます。
[キリ番情報] をクリックして、アクセスログがご自分
のものかどうかをご確認ください。



(Fantastic-camera.com へのご意見などはこちらにどうぞ)
webmaster : admin@fantastic-camera.com

カウンタ管理者専用